任務から帰宅して、あいつがまず目を向けたのはやはりその傷だった。
「どうしたんだよ、その傷」
顔一面に、苦しそうな表情が浮かぶ。まるで自分が傷を負ったみたいに。
「・・・・すまない」
「・・・・・?
いや、うん・・・でもなんであんたが謝るんだ?」
「おまえは、この眼が好きだと言った。それなのにオレは、それを護れなかった」
居心地悪そうに、セフィロスが俯く。
ザックスはキョトンとして、先程より一層眉を顰めた。
「あのな、違うんだよセフィロス。そうじゃない・・・・」
「おまえはこの眼が好きなんじゃないのか?」
「そうじゃなくて」
んんん、と唸って、ザックスはセフィロスの頭を引き寄せた。
手のひらで後頭部を包み己の肩に押し付けると、ぼんやりと白く光るような髪から乾いた血の匂いがした。
「セフィロス、あったかい?」
もう片方の手でセフィロスの指を絡めとると、指先の冷たさがじんわりと伝わってくる。
「・・・・・・ああ」
「うん。でもさ、あったかいだけらなら、毛布でも、スープでも、なんでもいいわけじゃん?」
「・・・・・・・・・」
「でも違うだろ? そういう意味で、オレはセフィロスの眼が好きだって言ったんだ。
オレたちソルジャーだし、怪我したくらいでいちいちとやかく言いたくないけどさ」
だけど、自分のことそんなふうに考えられると、すごく悲しいからさ。
セフィロスは無言のまま、ほんの少し、ザックスの手を握り返した。
それでもこの眼を無事に持って帰ってこられなかった自分に、怒りを感じる気持ちは消えなかったけれど、
セフィロスの知らない、なにか、に、こころが癒された。
「あっ・・・と」
体を離したザックスが、にんまり笑う。
「無事に帰ってきて、よかった」
fin