疲れ知らずのセフィロスが自ら休暇を要求したのは、彼が続く激務に耐えかねた夏の終わりの過ごしやすい日。
恋人なのか世話係なのか、ごく一部で微妙な立場を噂されているクラウドは彼の一言に心中慌てて上に申請を出しました。
初めてのことに面喰った上層部は、あっさり二人に休暇を申し渡しました。実際激務と言っても内容はデスクワークが主で、危うげな事件のない平和な日々が続いていたせいでしょうか。
連絡を受けたクラウドは、何故自分までもが、と戸惑いましたが、折角なので喜んでお偉いさんの決定をそのままにしました。
休暇が取れたこと、自分も同じ期間だけ休まされるらしいこと、そして急な任務が入った場合にはすぐに要請に応じると約束させられたことを報告すると、セフィロスは首をがくがくさせて二回ほど頷きました。

「すぐに自宅に戻って大丈夫ですよ。二三残っている書類は、こちらで処理しておきます」

勤務時の態度を崩さず、けれど気遣いの滲んだ声色でクラウドがそう言いましたが、セフィロスは首を横に振ります。

「それは自室に持って帰る。おまえも休暇が取れたなら、部屋へ戻ればいい」
「しかしどうせあと少しですし」
「だから部屋でやれと言ってるんだ」

書類を引っ掴んで颯爽と立ち上がったセフィロスは、クラウドに視線で合図して執務室を出て行きます。クラウドは慌てて上着と少ない荷物をまとめました。最後にセフィロス専用の端末―最近はこれを触るのは専らクラウドだけです―を操作しているとき、送信済みのメールに自分の休暇申請を見つけました。先ほど自分が上と話している隙にセフィロスが送ったらしいそれに、クラウドはなんともいえない顔をしました。


結局セフィロスの住む見晴らしの良いマンションの最上階までついて来たクラウドは、さっさとバスルームに消えてしまったセフィロスを気にすることも無く、彼が放り出した書類に早速目を通します。
それはごく簡単な、隊の編成変更の事後報告で、クラウドは休暇が終わるまでにあいつにサインさせれば良いと判断しソファに体を投げ出しました。このところソルジャー以上に戦場に出る機会の無かった一般兵のクラウドの体は、他の兵士同様慣れない事務仕事に大分参っていたようです。ほぐす様に上下させた肩から鈍い音がして、今更ながら突然与えられた休息に感謝の気持ちが湧きました。
しばらくだれていると、シャワーの音が止みました。クラウドはよっこらしょと起き上がり、氷を沢山入れてアイスティーを作ります。程なくしてセフィロスが、滴る水滴を受ける床を気にかけもせずリビングに入ってきました。

「はいどうぞ。今日はミルク淹れる?」

駆け足で近づいて、おざなりに肩に掛けられたバスタオルを取り上げセフィロスの頭に被せてやってから冷えたグラスを渡してやると、彼は無言でそれを飲み干しました。氷だけになったグラスを返すとき「うまい。」と一言、感想も忘れません。
セフィロスをソファに座らせて髪を乾かしながら、クラウドはところでさぁ、と口を開きました。

「どうしたの突然休暇なんて。そんなに疲れた?」
「戦いが始まれば戻る」

むっとして返すセフィロスに、クラウドは苦笑を滲ませます。

「べつに責めてんじゃないって。あんたが自分から休もうとするの、初めて見たから」
「戦いが途切れると、あいつらはオレの扱いに困る。そうしてとりあえず沢山仕事をいれる」

暇になると暴れ出すとでも思ってるのか、とセフィロスは嫌そうに舌を打ち言葉を続けました。

「だから助け舟を出してやった」

そういって後ろに倒れこんだセフィロスとソファの背凭れの間に素早くタオルをさし入れることは忘れませんでしたが、クラウドの心中は複雑です。そして、はたと気が付きました。

「それはそうとして、なんでオレにまで休み取ったんだおい?」
「うるさい」

一週間も、暇だろう。

そう憮然として言い放つセフィロスの後ろ髪を、クラウドは無言で掻き分けて冷えた手で顕れたうなじを鷲掴み、見事セフィロスに潰れた様な声を出させました。











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この文体・・・・・ムリムリ、無理です