[Intense heat]








「すっずしーー」
英雄の執務室に派手な音をたてて乗り込んだ一般兵は、
入ってくるなり床に腹這いになった。
「・・・ノックは?階級は?用件は?」
「えー・・」
クラウドはだるそうに唸って、足先で扉を数回蹴っ飛ばす。
「クラウド=ストライフ、ソルジャーなりそこないの神羅一般兵。用件は・・・避暑?」
「聞くな。さっさと仕事に戻れ!」
そこで漸く身体を起す。
「見てわかんない?この汗と服装、本日の訓練完遂済み」
セフィロスはデスクに広げた書類に拳を叩きつけて、だらしなく半身を起したクラウドを睨め付ける。
「なら、トレーニングルームにでもなんでも行けば良いだろう。冷房が効いてるのはなにもここだけじゃない」
「あんなむさ苦しいとこ、遠慮・・・・」
言いながら、ずるずると部屋の中心に向かって這ってくる。本人は冷えたリノリウムに陶酔気味だが、端から見ているセフィロスにとっては決して気持ちのいい光景ではなかった。
デスクの前まで辿り着いて、ぐったりと身体を弛緩させる。
床の冷気を吸い取ったせいか、金髪からのぞく顔が先程より穏やかに見える。
「それにここならアンタいるし」
歳相応の笑顔で見上げてくる。セフィロスはかち合った視線が小憎たらしくて、ぷいと顔を背けた。
「ね、明日午後までオレ非番なんだけど」
ぴくりとセフィロスが反応する。
「アンタも明日はデスクワークのみだったよね」
「・・・・」
「ふふ・・今日は朝まで頑張っちゃお」
「いつもは頑張ってないのか」
突っ込みどころはそこかよ、と思ったが、勿論口には出さない。
「そんなわけないだろ」
体を起して、セフィロスに近づく。机に乗り上げれば、散らばっていた書類が音を立てて皺を作った。
「まだ・・・・」
「味見くらい・・させてよ」
顔と顔の距離が近づく。あと数センチ。しかし二人の眼は開かれたまま、お互いの蒼を映して輝く瞳を凝視する。
「セフィロス・・」
「ん・・・・」
冷えた唇を覆って、ゆっくりと熱を送る。
軽く音を立てて一端離れ、再び見詰め合う。
セフィロスの仕事用の面が綻び始めている。そんな彼を見て、クラウドが本気モードに突入しかけた、その時。

「すっずしーー!」

先程と同じく不躾に扉を開けて、汗まみれの男が爽やかな笑顔で入ってきた。
セフィロスは慌ててクラウドを脇に押しやり英雄面を取り繕う。
「・・・ザックス」
「おっ、クラウド!てめー訓練終わったと思ったらいなくなりやがって、こんなとこで涼んでたのか。・・・あれ、どしたの?」
あからさまに不機嫌な上司と心なしか楽しそうな親友に見つめられて、ザックスは頭を掻いた。
「もしかして、お楽しみだった?」
「なっ・・・!」
「分かってんなら遠慮しろよ」
「クラウド!」
「まーまー、隊長。
すぐ出てくから、せめて汗乾くまで涼ませてくださいよ」
そう言ってザックスはごろりと横になった。仕方ないとばかりにクラウドもそれに倣う。
「・・・どうして二人して床なんだ!」
「冷気って下に集まるんだよ」
「そうそう」
ごろごろ転がるクラウドとザックス。セフィロスは額に手を当てて嘆息した。
「なんか・・・寝ちゃいそう・・」
「クラウド・・人が入ってきたら誤解されるぞ」
「うわ、それは勘弁。これだとオレがヤられた側じゃん」
「そんなこと言ってないっ!」
「おい二人とも。それに、それだと俺までやられたってことに・・」
「お前ら、でてけ!!!」

今にもファイガをかましそうなセフィロスの執務室は、その後も報告書を持ってきた一般兵を固まらせたり、用事も無いのに副社長が訪ねてきたりと、1日中忙しなかった。





end







いつだったかの夏にザクセフィとシスプリと3つ書いたんですがこれしかデータが残ってなかった