クラウドの夢は、話に聞くセフィロスのように強くなることだった。
英雄と謳われる伝説のソルジャーに少しでも近づくことだった。


[ riten. ]



セフィロスが死んだとの報道があったのは、クラウドが正式に神羅に入隊してから一週間後のことだった。
上層部が明かしたのは、セフィロスが先の戦いで健闘の末命を落としたこと、それだけだ。


クラウドを含め新参の兵士達は、その報道があった翌日の入隊式で初めて生で憧れの英雄を見れるはずだった。しかしいざ現れたのは、赤いロングコートを着た、茶色い髪の男だった。
男は、亡きセフィロスにとって自分は背中を預けて戦えるほどの存在だったと言い、兵士たちに訓示を述べた。
「かつての英雄の後を引き継ぎ、新たな伝説を作ってくれることを我々も願っている」
腹の突き出たお偉方が男の肩を叩きながらそう言った。

同じクラス1stでありながら、セフィロスとは似ても似つかない男。式中に何度か名前を聞いたが、クラウドはファーストネームすら覚えていない。


セフィロスは。
セフィロスは、どんな戦い方をした。どんな相手に殺された。それとも自分のミスで命を落としたのだろうか?その時他の兵士たちは何をしていた。あの茶髪の男は?あの男は死んでいないということは、彼はセフィロスより強いのだろうか?クラウドには分かりようもなかった。


その日からクラウドは、訓練でも実戦でも、仲間たちが倒れ伏していくのを見る度、そこにセフィロス見つけた。もはやクラウド自身が作り出したヴァーチャル世界の中で、血を吸って所々赤で染まった銀の髪が泥の上に散らばる。しかし、すぐに彼ならあんなミスは犯さないと思い直す。そうすると顔のぼやけた敗者は元の兵士の顔に戻っていく。そこにセフィロスはいない。セフィロスは何処に居るのだろう。
何処で死んでいるのだろう。
クラウドはいつか自分が、セフィロスのように死んでいくのを夢見ている。しかし、クラウドはセフィロスがどうやって死んだか知らないのだ。それはもうわかりようがない。




クラウドの夢は、話に聞くセフィロスのように強くなることだった。
英雄と謳われる伝説のソルジャーに少しでも近づくことだった。
漠然とも言えるその目標は、あくまで目標であり通過点であり彼はその媒介者だ。そこにセフィロスという一個人は存在しなかった。
しかし今クラウドは、その人自体を追いかけている。 死人は何も言わなかった。













...




今ショパンのノクターン第13番を弾いてるんですが、とても良い曲です。略さないと「ritenuto」?
それ故にとなだが弾くと「うっせー!止めろっ!」てなります。(笑)自分で弾いてるのにストップかけたくなるよー。だから練習苦手なんだよねえ。汚い曲になっちゃうから。でも弾くのは好き。ジレンマ。