[信じていれば]
「クラウド―――――・・・!!」
やかましく音を立てて部屋へ入ってきたセフィロスは、珍しく息を荒げていた。
居間のソファで寛いでいたクラウドは、尋常じゃないセフィロスの様子に持っていた雑誌を取り落とした。
「どしたの!?」
確か今日は夜までかかる仕事だったはず・・・・・・一瞬跳ね上がった心拍を諌めつつ、落とした雑誌を素早く且つさり気なく押しやってからずり落ちかけていたソファを降りる。まだ肩で息をしているセフィロスは抜き身のままの正宗を持ちにくそうに脇に挟んで両手で黒コートの前を掻き合わせている。
何、と問う間もなく、セフィロスがキッと眦を上げてガバリと胸元を開け放した。
クロスサスペンダーの間から、ぽろんと零れる二つのふくらみ。
「―――――またやったな、クラウド」
セフィロスの胸が、女のそれのような盛り上がりを見せたのは、実は今回が初めてではなかった。
回数にして、三回目である。
眉間に掘り込んだような深い皺を作って、セフィロスが無言でクラウドの座っていたソファに近づく。
クラウドが反応する前に背凭れとクッションの間に落ちていた雑誌を拾い上げられ、再び睨みつけてきた。
表紙には極端に布地の少ない水着を着た女性の写真。
所謂エロ本を握り締め眼をギラつかせている英雄を前にして、クラウドの目線はついその膨らんだ胸元に引き寄せられる。
「おまえ・・・・・・ッ見るな!」
視線に気付いたセフィロスが更にクラウドを威嚇した。
「・・・こういうものを見るのは勝手だが、オレにシンクロさせて考えるなと言っているだろう!任務が終わったと思ったらこうなって危うくザックス達に見つかるところだった」
「ごめん、わざとじゃないんだけど」
「無意識でも悪い。 もういい、さっさとその気持ちの悪い想像をやめろ・・・・」
漸く正宗を脇から抜いたセフィロスは疲れたようにソファに身体を投げ出した。
「そんなずっと考えてたわけじゃ・・・・・・」
クラウドはそう言ってみるも、現に今もセフィロスの胸があの通りなのだから二の次が告げない。
どうにか巨乳のセフィロスを頭から追い出そうとする。が、目の前に気だるげに重くなった胸をちらちら気にしているセフィロスがいて、思考はもっと危ない方向に向かってしまう。とてもじゃないが集中など出来ない。
「・・・・・・ちょっと向こうでがんばってくる・・・」
すごすごリビングを出て行くクラウドの背に、「サスペンダーが食い込んで取れない」とぼやく声が聞こえて、しばらく戻すのは無理かなぁと情けない溜め息が漏れた。
おわれ。