[Sharing]






「同じ年代の、しかも同性へのプレゼントに、こんなに悩むものかしら・・・・・・」

赤紫色の髪と水色の髪が、触れ合うほどに近づき呼吸に合わせて揺れている。
二人は腕を組み、俯いて悩ましげに瞳を閉じている。
千影と亞里亞は、程好い距離を置いて座っていた。しかし、俯き過ぎるあまり体が傾いてしまっていて、横から見ると二人の間は三角形を描いている。
亞里亞が更に数センチ前屈みになる。と、同じタイミングで前傾した千影とついにぶつかった。
顔を上げれば、異様に顔が近いことに気付く。相手が相手ならチャンスだ!と舞い上がるような距離。
「・・・ちょっと?」
「君こそ・・・」
お互い姿勢を正す。見詰め合って、溜め息一つ。
「白雪の前世が分かれば参考に出来るかもしれないのに・・・」
「ちょっとあんた黙ってなさいよ」
麗しき爪先で傍らの少女を蹴り飛ばすと、平べったい財布を投げて寄越す。
「参考にするのは、こっち」
「・・・そうだね。私は・・・・・これほどかな」
千影が自分の財布の中身を亞里亞に見せた。この際黒い布地に浮き出た髑髏のマークについては突っ込まない。
「ふーん」
「君は?」
亞里亞が財布を数回振ると、次から次へと紙幣が舞い落ちた。
「・・・君に常識を求めるのは止めたつもりだが・・・」
「・・・足りないの?」
金銭感覚に疎いこのお嬢様に、自分と白雪は随分手を焼いたつもりだか・・・・と千影は嘆息した。
「安心していい。なんでも買えるよ、これだけあれば。でも、判断材料にはならなかったな・・・」
「そう・・・」

二人が悩んでいるのには訳がある。
通常、白雪の誕生日といえば調理器具が浮かぶ。
しかし料理に疎い二人には、何が役に立つのかがわからないし、白雪はあまり自宅の台所に人を入れないので(完成品を見せてびっくりさせるのが好きらしい)同じ物を買ってしまう可能性もある。第一、彼女のことだから、大抵のものは既に自分で揃えているだろう。
ではここは定番の花にするかという意見も出たが、きっと他の妹と被るだろうと却下された。

「あ、そうだ。可憐ちゃんたちに訊いてみましょうか」
亞里亞が思い出したように提案する。
「そうすればプレゼントが被る心配もなくなるし、参考にもなるでしょう?」
「・・そうだな。どの道このままじゃ決まらないだろうし」
「決定!」
亞里亞はそう言い放って颯爽と立ち上がった。途端、パニエの裾が足に絡んでよろめく。
千影が素早く動いて下から支えた。腕の中に納まり目をしばたいて見上げてくる亞里亞に、笑いを漏らした。
「楽しそうだね」
その言葉に、ふわり、と亞里亞が笑みを向ける。花のような笑顔。薄紅色の唇が小さく礼を述べた。
「だって楽しいもの。はしゃいじゃうわよ」
こうやって、二人で祝える日がくるなんて、思わなかったから。
千影は彼女の心の内を読み取って、同じように微笑み、彼女の髪を優しく梳いた。